大都市制度を考えるPart4~ずっといまのまま?~【後編】(第9回_20180602@ドーンセンター)

第9回 自治フォーラムおおさか 第2部 大都市制度を考えるPart4 ~ずっと いまのまま~ 〇パネラーそれぞれの意見 後半は、3人のパネリストが「いま大阪市に求められていること」についてそれぞれの見解を示しました。 山口委員長は「総合区は住民自治を拡充できる制度として評価できる。ただ、区への権限移譲は横浜市のように現行制度でも可能であり、住民投票で可決されれば“特別区”、否決されれば“総合区”というのは乱暴すぎる。あくまで個人の意見だが、将来的な課題として“合区”問題は避けて通れない。区に権限移譲をして、仕事の効率化を進めたとしても、24区体制のままでは職員不足は明らかで、職員を増やすのか、もう少し広域の視点で“合区を含めた都市経営”を考えていくのか。人口減少を迎えた大阪市は市民と丁寧に合意を形成して改革する必要がある。その際には、行政機構のみならず、市職員の役割も大きな転換期を迎え、冨野暉一郎氏が提唱する地域公共人材として役割を果たせるかどうかが大切になる。」 次に金谷客員教授は「総合区・特別区の住民説明会後のアンケート結果からも、市民は“いまのままでええやんか”という意向のように思える。ただ、人口減少期を迎えた大阪市は“いまのままを維持できない”ことは明らか。ここでもう一度立ち止まって、これまでの改革を評価し“民主導、住民自治、三方良し、多文化に寛容”という大阪市らしさを活かした次の都市像を住民と共に描くべき。そのうえで、行政組織・選挙制度・住民自治などの個別テーマの改革…

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大都市制度を考えるPart4~ずっといまのまま?~【前編】(第9回_20180602@ドーンセンター)

第9回 自治フォーラムおおさか 第1部 大都市制度を考えるPart4 ~ずっと いまのまま~ 山口 勝巳さん(自治労大阪府本部 委員長) 金谷 一郎さん(大阪経済法科大学 客員教授) 武 直樹さん(NPO法人いくの市民活動支援センター代表理事) 西脇 邦雄(大阪経済法科大学 教授) レポート:けさまる  大都市制度をテーマにした自治フォーラムも4回目。フォーラム直前、松井知事は「秋までには自信のある都構想のプランができない。来春の統一地方選と同日に住民投票が望ましい」と、秋の住民投票断念を発表しましたが・・・。さて、今回は、これまで学んできた大都市制度の振り返りからスタートし、大阪市にいま求められていることはなにか?3人のパネラーと議論しました。 山口委員長は個人の意見として、「現在の特別区・総合区案には賛同はできないが“合区問題”はこれからの大阪市は避けては通れない」。金谷客員教授は研究者として、「高度成長期から安定成長期、そして人口減少期を迎えた大阪市に改革は必要だが、目指す“次の都市像”を深めるべき」。武代表は議員として、「いまのままはダメ。いろんな住民の声や考えが届きにくい24区。トップダウン型の総合区案・特別区案もダメ。制度的には総合区に期待できるけど、中身のある住民自治の実現に向け、いまできることを積み重ね、“プロセスの見える化”をすすめるべき」といった見解を示しました。 ■学んだことの振り返り 西脇教授を進行役に、3人のパネリストと大都市制度のポ…

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大都市制度を考えるPart3~母都市の役割、ダイナミズム、財政問題~【後編】(第8回_20180414@大阪経済法…

第8回 自治フォーラムおおさか 第2部 大都市制度を考えるPart3 ~母都市の役割、ダイナミズム、財政問題~ 〇特別区設置法定協議会等の議論の経過報告(武直樹 NPO法人いくの市民活動支援センター代表理事) 武さんからは、特別区や総合区が議会などでどのように議論されているのか経過報告がありました。 特別区は「大都市制度協議会」「大都市税財制度特別委員会」「財政総務委員会」という3つの場で議論がされていて、「住民参加やニアイズベターなどの『①住民自治』」「経済成長や職員配置、財政調整などの『②自治体経営』」が主な論点となっていることでした。 ただ、議論をするにも具体的な方策は見えにくく、住民自治については「270万人に1人の市長。270万人に4人の区長。どちらが住民の意見をくみ取れるかは明白でしょう」という説明がされたり、職員配置について「具体的で精緻な積算はできていないけど、今を基準に割り当ててイメージで試算しました」とか、経済効果についても「都構想そのものには経済効果はない。でも、都構想が実現して動き始めたら効果は出てきます」という漠然としたと4特別区案で説明が続いているようです。一方、総合区については、それほど熱意が伝わってはこないものの、大阪市を残したまま、都市内分権を進める取組なので、まだ具体性のある8区案ということでした。 とはいえ、マスコミの世論調査が示すように、大阪市民の一番人気は「いまのまま24区」なので、スケジュールありきで物事を進めるのではなく、そもそも…

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大都市制度を考えるPart3~母都市の役割、ダイナミズム、財政問題~【前編】(第8回_20180414@大阪経済法…

第8回 自治フォーラムおおさか 第1部 大都市制度を考えるPart3 ~母都市の役割、ダイナミズム、財政問題~ 小西 禎一さん(大阪経済法科大学客員教授) 武 直樹さん(NPO法人いくの市民活動支援センター代表理事) レポート:みなみ 延雄  当日の配布資料はこちら↓↓ 20180414第8回配布資料一式.pdf 参加者には元大阪市長の平松邦夫さん。 2011年の大阪市長選挙では、大阪都構想を掲げた橋下さんと正面対決した記憶がよみがえります。橋下知事時代に財政再建プロジェクトチーム長、松井知事時代に副知事を歴任された小西さんが、平松さんを目の前に何を語るのか。ちょっとした緊張感のあるフォーラムのスタートでした。小西さんは冒頭で「元市長の前で話をするのは、少々気が引ける」と言いながらも、水道局の府市統合のいきさつの質問が出ても、合意できなかった部分を客観的に回答するなど、歯に衣着せぬ発言もありました。ただ、豊富な行政経験に裏打ちされた、ひとつひとつの言葉には妙に納得することが多かったように思います。 ◎問われているのは「総合区か特別区か」ではなく、「大阪市をなくすかどうか」ということ (小西禎一 大阪経済法科大学 客員教授) ■問題設定をもう一度 まず、小西さんはマスコミ報道の立ちどころの違和感を述べます。「既存政党vs橋下維新」であった時代をそのままに、「総合区vs特別区」で取り上げることが多く、一番大切なポイントである「大阪市を残すか無くすか」が丁寧に説…

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大阪市の「働くかたち」の近未来【後編】(第7回_20180317@A´ワーク創造館)

第7回 自治フォーラムおおさか 第2部 大阪市の「働くかたち」の近未来 ~若者、シニア、女性が活躍できる都市づくりの条件は~ 〇仕事とハウジングのセーフティーネットから包容力ある都市を構想する 水内 俊雄 氏(大阪市立大学都市研究プラザ 教授) 水内先生は脱ホームレス支援が獲得してきた、ハウジングとセットにした就労支援の重要性に、もっと着目すべきと強調されます。大阪市の生活保護データの分析からは、転入者の動機の1つに大阪市が依然DNAとして持つ「就労のマグネット効果」があることが再確認され、こうした層にアクセスするにはハウジングというセーフティーネットの役割に積極的に目を向ける必要があることを指摘します。生活困窮の支援において出色のアウトカムを出している那覇市では、生活困窮者を一時的なハウジング提供でキャッチし、就労支援につないでいるそうです。働けるようになっても高い家賃負担は難しいので、広くはない11-15㎡のアパートが選択され、こうした物件が集中する地域では、支援を必要とする層も集住することになります。 集住すると「貧困ビジネス」の温床として偏見の目で見られがちですが、実は住宅扶助を利用した物件更新が個々に進み、社会的サービスも集積し「サービスハブ(手厚い支援提供機能をもつ特別な空間)」が構成され、包容力のある地域という側面も持ってきます。多様な人々が集積する都市においては、困難を抱える人の再出発を応援する「サービスハブ」機能は無視できないし、民間が参入する市場も構築され…

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大阪市の「働くかたち」の近未来【前編】(第7回_20180317@A´ワーク創造館)

第7回 自治フォーラムおおさか 第1部 大阪市の「働くかたち」の近未来 ~若者、シニア、女性が活躍できる都市づくりの条件は~ 西岡 正次さん(A´ワーク創造館就労支援室長) 五石 敬路さん(大阪市立大学創造都市研究科 准教授) 水内 俊雄さん(大阪市立大学都市研究プラザ 教授) レポート:けさまる 当日の配布資料はこちら↓↓ 20180317第7回配布資料一式.pdf 今回は大阪市の「働くかたち」をテーマに盛りだくさんな内容。正直なところ、ついていくのに必死でしたが、なるほど・ふむふむの連続で濃い時間を過ごせました。すごく簡単にいえば、西岡室長は「企業支援と他都市の住民(大阪経済を支える人材)を巻き込んだ就労支援の重要性」、五石准教授は「第2、第3のセーフティーネットに対応する就労支援と人的資源への投資」、水内教授は「ハウジング施策と連動した就労支援の有効性、例えば暫居と就労の一体施策など」を話していただきました。共通していたのは、「『働くかたち』をめぐって大阪市が政策的な戦略、ビジョンを持つこと」でした。 〇都市づくりと就労支援 西岡 正次(A´ワーク創造館 就労支援室長) A´ワーク創造館で、大阪市や大阪府、府内自治体が進める就労支援の再構築を応援している西岡さん。現在の就労支援が抱えている課題を、ワーキングプア(働く貧困層)や臨時福祉給付金対象(住民税非課税)、心身の不調で就労(継続)が困難な層など、「①マッチングに偏重した従来型の雇用システムでは支援が機能…

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共生のカタチを考える~共生&改革志向っぽい人々と地域~【後編】(第6回_20180128@難波市民学習センター)

第6回 自治フォーラムおおさか 第2部 共生のカタチを考える ~共生&改革志向っぽい人々と地域~ 〇右下大喜利 右下っぽさがなんとなくわかってきたところで、参加者全員による大喜利に。「右下っぽい学校」「右下っぽい万博」をお題目にネタを出し合います。それが右下かどうかを編集部4人が判定しました。 「右下っぽい学校」として認定されたネタには、“60年制の学校”(留年もできるし、飛び級もできる。誰でもいつでも通える学校)や“シェア校舎”(空き教室に住めたり、年齢でなく誰もが学校を利用できる)という意見がありました。お気に入りの“給食がカレーライスのみ”は左下認定。“校区の一番南東にある”(地図の右下)は左上という判定でした。学年と年齢は関係ない、教師と生徒の関係は柔軟に、教科書やテストがないといった、既存のルールや枠組みを超えた自由なところが「右下っぽい」という印象をみなさん持っていたようでした。 2つ目のお題、「右下っぽい万博」はもう収拾がつかない状態に。“レイシストばかりを集めて外国人とのハグ大会”“併せて100歳パス(チケット)を設定”“狭い会場ではなく、大阪全域に世界各国をあてはめる”“万国博覧会でなく万人博覧会”“スタッフ雇用は失業者、開催も2~3年の長期期間で”とみんながどんどん右下っぽさを考える楽しい?はじけた時間となりました。 〇わたしの「右下っぽさ」理解 ここここメンバーも、今回の参加者には「右下っぽさ」を少しはわかってもらえたという感触…

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共生のカタチを考える~共生&改革志向っぽい人々と地域~【前編】(第6回_20180128@難波市民学習センター)

第6回 自治フォーラムおおさか 第1部 共生のカタチを考える ~共生&改革志向っぽい人々と地域~ 武田 緑さん(コアプラス代表) 梅山 晃佑さん(コワーキングスペース往来 代表) 森川 真嗣さん(ゲストハウス 木雲 店主) 藤田 ツキトさん(シカトキノコ 代表) レポート:けさまる 配布資料はこちら↓↓ 20180128配布資料一式.pdf フォーラム当日、会場に入ると、床の真ん中に描かれた「ここここ」ロゴが目に飛び込んできました。その赤・青・黄・黒4色ロゴを取り囲んでテーブルが配置され、今日はどんなフォーラムになるのか、この時は見当もつきません。でも、参加者に楽しんでもらおうという心意気はびんびん伝わってきました。 今回登壇していただいたのは、ウェブマガジン「ここここ」編集部のみなさん。既存の地域・地縁組織と、つかず離れず絶妙な距離を保ちながら、でも地域をフィールドに、楽しい活動を続けるアラサー世代です。冒頭、自己紹介をかねて、それぞれの「右下っぽさ(共生&改革)とは?」を語ってもらいました。 ◎それぞれの「右下っぽさ(共生&改革)」 まず武田綠さんから、「右下っぽい感をつかんでもらい、新しい共生のかたちを模索」しましょうと、『右下ってなんだ?』の説明からスタート。横軸に【現状維持(左)】【改革(右)】、縦軸に【競争(上)】【共生(下)】を置いてみると、昔ながらの慣習にしばられるのではなく、柔軟に生きたいという右下っぽい(改革&共生)人が増えているように感じ…

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地域福祉の視点で考える~介護・子育て、共生ケアの可能性~【後編】(第5回_20171203@エル・おおさか南館)

第5回 自治フォーラムおおさか 第2部 地域福祉の視点で考える ~介護・子育て、共生ケアの可能性~ 〇実践報告1:「地域共生ケア生野推進委員会」 武 直樹 地域福祉・地域共生の実現には「ソーシャル・アクション」が不可欠であり、事例として地域共生ケア生野推進委員会の取り組みを紹介していただきました。 推進委員会は、属性別ではない高齢者から子どもが一緒に過ごせる“富山型デイサービス”を、生野区でもやりたいという地域住民の声からはじまりました。この指とまれ形式で呼びかけ、補助や助成がなくとも富山への視察や講演会を重ね、地域包括ケアセンターや区役所も加入する推進委員会が結成されました。そこからは、いざ実践と、新しい公共支援事業を活用し取り組むことで、大阪市地域共生型デイサービス事業につながりました。まさに地域の声が専門職・行政を巻き込み、制度につながった実践報告でした。 〇実践報告2:「住吉区地域見守り支援システム」 村田 進 地域福祉関連のセミナーでよく取り上げられる住吉区地域見守り支援システム。その構築に当事者の一員として関わってきた経験を報告いただきました。 支援システム構築のきっかけのひとつは、区長権限が増え、「住吉区地域福祉システムの再構築」を区が独自に掲げることができたこと。支えあい活動の基礎を小学校区とし、区独自にCSWを配置、そして見守り相談室が設置され、現在のシステム構築につながっていった。ただ、システムができても、“取り組みの地域差”や“見守りを支える支援員の発…

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地域福祉の視点で考える~介護・子育て、共生ケアの可能性~【前編】(第5回_20171203@エル・おおさか南館)

第5回 自治フォーラムおおさか 第1部 地域福祉の視点で考える ~介護・子育て、共生ケアの可能性~ 藤井 博志さん(関西学院大学 人間福祉学部教授) 武 直樹さん(NPO法人いくの市民活動支援センター代表理事) 村田 進さん(社会福祉法人ライフサポート協会 理事長) レポート:けさまる 当日の配布資料はこちら↓↓ 20171203第5回配布資料_一式.pdf 〇「我が事・丸ごと地域共生社会づくりのための地域福祉推進の方向性について」 藤井 博志 自治フォーラムから藤井先生に依頼したテーマは“地域福祉”でした。「大阪市の地域福祉」をお話していただく予定でしたが、市の地域福祉計画が審議途上のため、もう少し大きな流れである「我が事・丸ごと地域共生社会づくり」をベースに、地域福祉全般の話がテーマとなりました。 まず、“一億総活躍”“地域共生社会”“我が事・丸ごと”という、キレイなキャッチフレーズの二面性を知っておくことの重要性について言及されました。“一億総活躍”が、少子高齢化がもたらす労働力不足に起因する経済成長戦略の延長にあるならば、「誰もが働かなければならない」という“一億総火の玉”のような恐ろしい言葉となる。一方、すべての人の社会参加保障の延長であれば、「働きたい人のニーズに応える」という“インクルーシブ社会”の実現につながります。同様に“地域共生社会”“我が事・丸ごと”は、行政から言われると押し付け・強制された地域共生になってしまう。ただし、身近な圏域である小学…

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