地域福祉の視点で考える~介護・子育て、共生ケアの可能性~【前編】(第5回_20171203@エル・おおさか南館)

第5回 自治フォーラムおおさか 第1部
地域福祉の視点で考える
~介護・子育て、共生ケアの可能性~
藤井 博志さん(関西学院大学 人間福祉学部教授)
武 直樹さん(NPO法人いくの市民活動支援センター代表理事)
村田 進さん(社会福祉法人ライフサポート協会 理事長)
レポート:けさまる

当日の配布資料はこちら↓↓
20171203第5回配布資料_一式.pdf

〇「我が事・丸ごと地域共生社会づくりのための地域福祉推進の方向性について」 藤井 博志
自治フォーラムから藤井先生に依頼したテーマは“地域福祉”でした。「大阪市の地域福祉」をお話していただく予定でしたが、市の地域福祉計画が審議途上のため、もう少し大きな流れである「我が事・丸ごと地域共生社会づくり」をベースに、地域福祉全般の話がテーマとなりました。
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まず、“一億総活躍”“地域共生社会”“我が事・丸ごと”という、キレイなキャッチフレーズの二面性を知っておくことの重要性について言及されました。“一億総活躍”が、少子高齢化がもたらす労働力不足に起因する経済成長戦略の延長にあるならば、「誰もが働かなければならない」という“一億総火の玉”のような恐ろしい言葉となる。一方、すべての人の社会参加保障の延長であれば、「働きたい人のニーズに応える」という“インクルーシブ社会”の実現につながります。同様に“地域共生社会”“我が事・丸ごと”は、行政から言われると押し付け・強制された地域共生になってしまう。ただし、身近な圏域である小学校区域の課題を“我が事”ととらえ、制度の狭間の課題を“丸ごと”受け止めていこうとする施策の方向性は一定評価でき、住民が主体的に地域課題を把握し解決策を見いだせる体制をいかにつくれるかがポイントになるとのことでした。
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また、地域共生社会づくりに取り組むには、“生活困窮者自立支援事業(以下:生困事業)の活用”と“まちづくり施策と福祉の連動”が欠かせません。経済的困窮だけではない社会的孤立や縦割り制度の狭間にある課題を“丸ごと”受け止めるための生困事業であり、自発的な社会福祉である地域福祉の領域が広がっていけば、まちづくりにつながります。制度の狭間は予算の確保が難しいですが、地域の予算という視点を持てば、地域包括支援センターのエリア(中学校区)ごとの介護予算は平均6億円で、個別の事業をバラバラに実施するのではなく、地域で横串を通し、総合的な取り組みを進めれば、できることは増えるはずです。ただ、これらも自治体の運用次第で大きく変わり、生困事業の対象を狭くしたり、まちづくり施策の担当者が福祉に興味を示さないこともありえます。そうならないように、地域住民が自治体に働きかけていくことの大切さを指摘されました。
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「住民の行政参加ではなく、行政の地域参加が福祉のまちづくりには欠かせない」。この言葉がとても印象に残りました。少子高齢・単身化が進み、社会的孤立や社会的排除という問題に対応するには、見守りや気の掛け合いといった、信頼に基づく“関係性のケア”が必要であり、それは地域でしか実現できない。だからといって「担い手が住民」ではなく、「決め手が住民」ということを意識しながら、住民が発見した生活課題と、その解決を支えるのが行政や専門職という発想にはハッとしました。NPOやボランティア活動が広がるなかで、ついつい住民がサービスの担い手であり、自治体から丸投げをされても気づかないこともあるという問題提起でした。

第二部につづく・・・

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