地域福祉の視点で考える
~介護・子育て、共生ケアの可能性~
〇実践報告1:「地域共生ケア生野推進委員会」 武 直樹
地域福祉・地域共生の実現には「ソーシャル・アクション」が不可欠であり、事例として地域共生ケア生野推進委員会の取り組みを紹介していただきました。
推進委員会は、属性別ではない高齢者から子どもが一緒に過ごせる“富山型デイサービス”を、生野区でもやりたいという地域住民の声からはじまりました。この指とまれ形式で呼びかけ、補助や助成がなくとも富山への視察や講演会を重ね、地域包括ケアセンターや区役所も加入する推進委員会が結成されました。そこからは、いざ実践と、新しい公共支援事業を活用し取り組むことで、大阪市地域共生型デイサービス事業につながりました。まさに地域の声が専門職・行政を巻き込み、制度につながった実践報告でした。
〇実践報告2:「住吉区地域見守り支援システム」 村田 進
地域福祉関連のセミナーでよく取り上げられる住吉区地域見守り支援システム。その構築に当事者の一員として関わってきた経験を報告いただきました。
支援システム構築のきっかけのひとつは、区長権限が増え、「住吉区地域福祉システムの再構築」を区が独自に掲げることができたこと。支えあい活動の基礎を小学校区とし、区独自にCSWを配置、そして見守り相談室が設置され、現在のシステム構築につながっていった。ただ、システムができても、“取り組みの地域差”や“見守りを支える支援員の発掘”が課題として残り、これらを乗り越えるには、行政や専門職である、区役所・社会福祉協議会・社会福祉法人が旗振り役として地域を支えていく必要性を紹介いただきました。
〇質疑応答
9つのテーブルで意見交換をし、各テーブルから登壇者への質問を考えてもらいました。以下、おもだった意見・質問です。
Q.住吉区の見守りシステムの名簿管理や個人情報の守秘義務などの取り決めは?
本人同意を得たうえで個人情報を入手し、その名簿は地活協の会長が管理しています。また、支援員に守秘義務の確認はしているので、プライバシーに過敏となりすぎず、必要な時に個人情報を適切に使えるように心がけています。
Q.地縁団体や地域活動に住民が参加しやすくなるポイントは?
ムラ型の地縁団体は、高齢・女性・青年部と各世代が加入できる仕組みがあり、町会や自治会など全世帯加入ができていた時代・地域もありますが、単身化の進む都市部においては、地縁団体への参加が弱くなっていくのはやむを得ないところもあります。ただ、働く人が参加できるような会議の時間帯設定や、子どもと一緒に参加できるよう魅力的な取り組みを地道に続けることは大切です。
Q.地域共生社会の取り組みを進めていくうえで、行政・社協の役割はどうなる?
地域共生社会の取り組みが進めば、行政・社協は地域を支える仕事がどんどん増えます。つまり、行政・社協も地域に入らなければ自分たちの立場がなくなることを認識すべきです。ただ、地域も、“行政を育てていくという意識”を持ち、行政も地域の流儀を理解することが大切です。地域住民は初めて顔を出した行政マンにひとしきり文句を言ってから仲良くなろうとしますが、文句を言われるからと足を遠ざける行政マンも多くいます。そして、制度の狭間の課題に取り組むのであれば、法律や制度の枠組みで是非を判断する「法律行政」ではなく、どうやれば生活が成り立つかを考え、制度を活用する「生活行政」を担える人材を育てていく必要があります。
まとめ
西脇さんより、「我が事・丸ごと」という大きな話ではなく、地域共生社会の実現には“見守り”という地域での地道な信頼関係づくりが肝要。そして、行政との協働をすすめるには、住民も大人の対応を覚えていくことの大切さを指摘して閉会しました。
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