大阪市の「働くかたち」の近未来【後編】(第7回_20180317@A´ワーク創造館)

第7回 自治フォーラムおおさか 第2部
大阪市の「働くかたち」の近未来
~若者、シニア、女性が活躍できる都市づくりの条件は~


〇仕事とハウジングのセーフティーネットから包容力ある都市を構想する 水内 俊雄 氏(大阪市立大学都市研究プラザ 教授)
07水内.JPG
水内先生は脱ホームレス支援が獲得してきた、ハウジングとセットにした就労支援の重要性に、もっと着目すべきと強調されます。大阪市の生活保護データの分析からは、転入者の動機の1つに大阪市が依然DNAとして持つ「就労のマグネット効果」があることが再確認され、こうした層にアクセスするにはハウジングというセーフティーネットの役割に積極的に目を向ける必要があることを指摘します。生活困窮の支援において出色のアウトカムを出している那覇市では、生活困窮者を一時的なハウジング提供でキャッチし、就労支援につないでいるそうです。働けるようになっても高い家賃負担は難しいので、広くはない11-15㎡のアパートが選択され、こうした物件が集中する地域では、支援を必要とする層も集住することになります。

集住すると「貧困ビジネス」の温床として偏見の目で見られがちですが、実は住宅扶助を利用した物件更新が個々に進み、社会的サービスも集積し「サービスハブ(手厚い支援提供機能をもつ特別な空間)」が構成され、包容力のある地域という側面も持ってきます。多様な人々が集積する都市においては、困難を抱える人の再出発を応援する「サービスハブ」機能は無視できないし、民間が参入する市場も構築されます。このような社会的サービスと市場をどのように位置づけ、市場を適正な方向に導けるか。白黒の判断だけで切り捨てるのではなく、グレーな存在も潜在力として活かせるか。ハウジングと一体となったサービスハブの地域的展開が大阪市の今後を構想するうえでは大切だという提案でした。

24区の人口やタワーマンション、所得分布などの配布データは環状線内外格差など地域の違いを鮮やかに示していました。地域特性を反映できる住民自治をイメージした時、適正な行政エリアの範囲と母都市機能を維持するための自治体規模の問題については考えさせられました。

〇意見交換
07橋本.JPG
意見交換では、元自治労大阪府職員関係労組委員長の橋本さんから「公共調達は行政の赤字解消策として安かろう悪かろうがまかり通り、そこで働く人の暮らしを想像できていないこと。また、総合評価入札制度など公共調達を活用した就労支援の可能性」を。大阪市職員労働組合民生支部の柴田さんは「行政事業の相談や就労支援などは、民間に委託するか直営でも非正規雇用がほとんどで、支援のノウハウを引き継げず、現場の声を反映したビジョンを描きにくくなっていること」を発表いただきました。こうした意見を踏まえ「過去の大阪市職員に散見されたDNAともいえる、“地域課題の解析能力”や“地域調整力”にもう一度スポットをあてるべき」「業務委託であっても、せめて受託者に行政保有情報の共有できる方策を検討すべき」「スキルや知識をバックアップできる大学と連携した人材育成の研修機能を育ててゆくべき」などの提案がありました。
07柴田.JPG
07武さん.JPG

この記事へのコメント