大都市制度を考えるPart4
~ずっと いまのまま~
山口 勝巳さん(自治労大阪府本部 委員長)
金谷 一郎さん(大阪経済法科大学 客員教授)
武 直樹さん(NPO法人いくの市民活動支援センター代表理事)
西脇 邦雄(大阪経済法科大学 教授)
レポート:けさまる
大都市制度をテーマにした自治フォーラムも4回目。フォーラム直前、松井知事は「秋までには自信のある都構想のプランができない。来春の統一地方選と同日に住民投票が望ましい」と、秋の住民投票断念を発表しましたが・・・。さて、今回は、これまで学んできた大都市制度の振り返りからスタートし、大阪市にいま求められていることはなにか?3人のパネラーと議論しました。
山口委員長は個人の意見として、「現在の特別区・総合区案には賛同はできないが“合区問題”はこれからの大阪市は避けては通れない」。金谷客員教授は研究者として、「高度成長期から安定成長期、そして人口減少期を迎えた大阪市に改革は必要だが、目指す“次の都市像”を深めるべき」。武代表は議員として、「いまのままはダメ。いろんな住民の声や考えが届きにくい24区。トップダウン型の総合区案・特別区案もダメ。制度的には総合区に期待できるけど、中身のある住民自治の実現に向け、いまできることを積み重ね、“プロセスの見える化”をすすめるべき」といった見解を示しました。
■学んだことの振り返り
西脇教授を進行役に、3人のパネリストと大都市制度のポイントをおさらいします。キーワードは「①ニアイズベター」「②母都市機能の維持と財源」「③二重行政」。
「①ニアイズベター」では、住民の声を届ける市会議員の話題に。区の数が減ったとしても、地域自治区を導入し、24区時代の利便性は担保するとはいいますが、議員数が増えなければ、人口3万人に1人の議員のままです。市民の多様な声が届く「ニアイズベター」を実現するのであれば、東京23区の1万人に1人の区議会議員(1.8万人の世田谷区~2千人の千代田区)などを参考に、議員数の検討も必要です。2015年の住民投票では「1人の市長で260万人は限界で、5人の特別区長でやっていく」というコトでしたが、首長だけの問題ではありません。
「②母都市機能の維持と財源」では、昼間人口密度が政令市トップ(15,906人/k㎡:2010年国勢調査)の大阪市は、母都市として地下鉄・社会教育施設・病院などのインフラにも投資し、周囲の住民をうけいれ、発展してきた歴史があります。この膨大なインフラの更新や梅田北ヤードの大規模開発などにこれからも投資が必要です。大阪市が廃止される大阪都構想では、大阪市の自主財源は1/4(6,600億円⇒1,750億円)となり、残りの財源を吸収した大阪府が調整をして、これまで通り投資していくと説明されていますが、明確な決まりごとはありません。一部では府が投資をするのだから、その恩恵を受ける大阪市民にも一定の負担を求める可能性が指摘されており、二重行政ならぬ大阪市民の税の“二重負担”にもなりかねません。
「③二重行政」については、限られた税金を有効に使おうという市民の関心を高めたことは一定評価できます。ただ、2015年の住民投票で俎上にのった項目については、その後の府市協議で同種施設の統合やニーズを踏まえた各施設の役割も明確となり、弊害はほぼ解消されています。一方で府市統合による二重行政の解消は4000億円の財源を生み出すとされましたが、結局1億円の効果しか生み出さないという試算も明らかになりました。いまは二重行政よりも、人口減少社会を迎えた大阪市における、市民も納得する“身の丈改革”のほうが議論すべきことです。
第二部に続く・・・
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