大阪の下町成長戦略を考える~空家活用を切り口に~
〇生野区空家利活用事例紹介(伊藤 千春)

「ただただ自分たちで空家を改修してみたかった」という伊藤さん。そんな時、生野区桃谷の空家と出会い、念願をかなえ自宅へとDIY。1階を“イベントと、ギャラリーitochiha”として、「住み開き」も実践。写真展や映画祭、紙芝居といった芸術文化から料理教室や桃谷のまちあそびなどのイベントをやったり、まるで「おとなの秘密基地」。そんな伊藤さんの周りには、一緒に楽しむ人々が集まり、地域の小学校や神社を巻き込んだイベント、近くの空き倉庫を活用したイベントなど、itochihaを拠点に桃谷も動き始めています。ちなみに、映画祭は「桃の節句に、桃谷で、桃色映画祭」と伊藤さんの桃谷ラブ度合が伝わるネーミングです。

また、建築家でもある伊藤さんは、空家を探していた時の大家さんのつぶやき「まちとひとも高齢化して、空家が増えている。でも古い町並みがなくなるのは悲しい。若い人が古い建物をうまく使ってくれたらな~」という声が忘れられません。平成27年に生野区役所の呼びかけで開催された「生野区空家リノベーションアイディアコンクール」や貸し手や借り手のマッチングの取組「空家カフェ(毎月19日)」、生野区の下町情報誌「桃谷ロイター」などなどを通じて4軒の空き家活用にも関わっています。第1号PJの橋爪邸の工事は、夜な夜な関係者が集まり、ワイワイガヤガヤ語りながら、地元の木材店を使った工事や地元の製作所に依頼した手洗いやキッチンなどなど“イクノメイド”にこだわり、まさに高見さんが言っていた「地域でお金を循環させる」お手本のような取組です。自分が楽しむと、周りを自然と巻き込み、顔のみえる関係づくりができる。そうすると、大家さんの悩みがやりたい人の種になり、まちづくりが進む。そんな実践報告でした。
伊藤氏当日資料.pdf
■パネルトーク・質疑応答
後半は、武さんをファシリテーターに3人のパネリストが会場からの質問に答えました。

Q:改修が可能かの判断は?
A:明確な判断基準はありません。はつってみたら柱や土台が白アリでボロボロとかもあり、外見は変わらなくても、物件ごとで改修費用は大きく変わります。ただ、狭い道に面している場合は、一度壊すと立て直せなかったりするので、やりたいことを聞いてからの個別判断になってしまいます。
Q:子どもたちの年齢の違いはシェアハウスで問題にならない?
A:オーナーは小学生ぐらいまでの子どもを想定することが多いのですが、シェアハウスの多くは1部屋。もう少し早い年齢で転居するケースが多く、子ども達は比較的近い年齢層が多いです。親子1対1だと、お母ちゃん遊んで遊んでと言われるぐらいまではシェアハウスで充電して、次のステップを支える住まいや就労をどのように提供していくかが、これからの大きなテーマです。
Q:コミュニティ・ビジネスやスモールビジネスをはじめるコツは?
A:起業というとハードルが高い。ビジネスではなく、自分が楽しい・面白いことをやることで、モチベーションをあげることが第一。次に、地域の人々とつながっていくこと。つながる部分では区役所がもっと地域コーディネート力を高めていくことに期待します。
Q:大阪の下町成長戦略に必要なことは?
A:地域のいろんな活動がつながること。縦だけ、横だけでなく、重層的なつながりが大切。その時、区役所の積極的なサポートは大きな力になります。
A:民間はどうやったら儲かるか。という部分が強調され、展開も撤退も早いのですが、もう少しシングルマザーの理想のくらしを想像しながら、腰を据えて空間と時間の貧困問題にも取り組むような、こころある地域の事業者が参入できる仕組みを大阪市発でつくることが大切。
A:地域の中小企業を大切にしてください。経済は生態系で、縫製技術・金型技術などどれか1つ欠けただけでも、すべてがダメになることもあります。隣の商店・中小企業を応援してください。
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