2020年9月3日 大阪市会臨時会本会議。「特別区設置協定書」の議決の日でした。
大阪市を廃止し、4特別区を設置する協定書は可決されました。
投票総数82。賛成57票、反対25票。維新、公明党の賛成で可決されました。
また、議員一人一人の決定の責任を明らかにする趣旨で起立採決でなく、記名投票で行われました。
採決前の各会派を代表討論では、自治フォーラムおおさか共同代表の武議員も「市民とつながる・くらしが第一大阪市会議員団」として、反対討論をおこないました。
「民主主義を問う」演説の全文はこちら。
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2020年9月3日 大阪市会臨時会本会議
市民とつながる・くらしが第一大阪市会議員団 代表 武 直樹

私は、市民とつながる・くらしが第一大阪市会議員団を代表して、
議案、第134号「特別区設置協定書の承認について」及び議案第135号に対して
反対の立場から討論をいたします。
民主主義を成立させる前提条件として、次の2つが大変重要です。
一つは、正確な情報が開示されていることです。
そして、もうひとつが、市民の皆さんの参加がしっかりと担保されていることです。
1点目の正確な情報の開示については、
例えば、財政シュミレーションに、相当な幅があるのであれば
市民の皆さんに様々なパターンをつくって相当な幅があることを理解できるように示さなくてはなりません。
また、市民利用施設はなくなることが前提であるならば、そのことも正確に説明しなくてはなりません。
どんな物事でもメリット、デメリットがあるのです。
市民の皆さんにその事実を正確に伝えてこそ民主主義は成り立ちます。
2点目は、住民参加が十分に担保されているのか?という点です。
できるだけ多くの市民の皆さんがメリット、デメリットの正確な情報を知り、吟味し、
最終決定するためのプロセスに参加できるかが、ポイントです。
この参加のプロセスを大事にすること、こそが民主主義の根幹です。
今回の説明会は、開催回数、開催方法、どれをとっても前回並みにさえ実施ができません。
これでは、住民参加が十分に担保されているとは、到底思えません。
正確な情報を知る参加の機会をつくることは行政の責務です。
なぜ、いまなのでしょうか?今ではないと考えます。
急ぐ理由は何なんでしょうか?
民主主義を成立させる前提条件である
正確な情報を開示することができません。
そして、コロナ禍で、住民の参加を十分に担保することが難しいのに
なぜいまなのでしょうか?
行政は、市民の皆さんが生活する中で、また、活動する中で生じてくる
様々な課題の解決に向けて、様々な政策に取り組んでいます。
都構想は、行政が、課題解決のために取り組んでいる様々な政策のうちの一つです。
一方、コロナ対策も行政がいま取り組まなくてはならない政策のひとつです。
皆さん、介護の現場がいま、どんなことになっているかご存知でしょうか?
毎日、私の身の回りにも、
陽性者が出た、濃厚接触者になったという報告がはいってきます。
例えば、毎日、通いのデイサービスにきてお風呂に入っていた1人ぐらしの高齢者が
濃厚接触者になったら、どうなると思いますか?
その人がデイサービスに通えない間のケアは誰がするのでしょうか?
さらに、デイサービスの介護職員が陽性や濃厚接触者になった時、その空いた穴は
誰が埋めるのでしょうか?
現在、なんの仕組みもありません。
現場まかせで、現場は大混乱です。
また、陽性者のケアをしていた職員でも、
濃厚接触者と定義されなければ、
PCR検査を受けたくても受けられません。
「ほんとに、大丈夫だろうか」と確信がないまま、ケアを継続しています。
ものすごい不安とプレッシャーです。
どうしたら、1人暮らしの高齢者が濃厚接触者になっても、
自宅で安心して生活を継続できるのかを考えていくことが行政や議会としては優先すべきことではないのでしょうか?
また、ケアに不安がある介護職員が気軽にPCR検査をどうしたら受けられるのかを考えていくことが、行政や議会としては優先すべきことではないのでしょうか?
これらは1例で、これ以外にも考えなくてはならないことたくさんあります。
保育園、幼稚園、小中学校でも介護の現場と同じことが起こっています。
信用保証協会の申し込みに必要な認定件数は、
3月からの5か月で38,972件、昨年度の同じ5か月は、400件。実に97倍の伸びです。
中小企業の支援は今後どうしていくのでしょうか?
生活困窮者自立支援窓口における住宅確保給付金の申請件数は、
4月からの3ヶ月で5,568件。昨年度の同じ3ヶ月は、19件。なんと293倍の伸びです。
尋常な状況ではありません。
また、区のイベントは、区民まつりを始めとして軒並み中止で、
実施することすらできていません。
各種団体のイベントや研修会なども中止があいついでいます。
そして、大阪の重症患者数は、突出し、
病院や保健所は、引き続き大変な状況が続いていることはご存知の通りです。

いま、述べてきた、これらの取り組まなければならないコロナ対策は、政策です。
都構想も同じく政策です。
政策の優先順位は、どちらなのでしょうか?
私は、市民のくらしや命を守るためコロナ対策が優先だと考えます。
さて、民主主義の根幹の話しにもどります。
役所や議員の事務所に毎日「明日のくらしがどうなるかわからない」
と相談が寄せられ、市民のくらしや命が脅かされているときに、
民主主義の根幹である、住民参加の十分な担保が「行政として、できるのか?」
ということです。
私はできないと考えます。
様々な地域活動やイベントが中止されて、
さらに、公の研修会なども中止されている時に
そして、いまなお、くらしや命が脅かされている時に
感染の危険を冒してまで、住民の皆さんは参加しようと考えるでしょうか?
特に、高齢者、障害者、ひとり親家庭、病気の方など社会的に立場が弱い人たちは
ますます、参加が疎外されます。
さらに、コロナの濃厚接触者や陽性者はそもそも参加することすらできません。
こうした状況では、民主主義の根幹である市民の皆さんの参加の機会が
十分に担保されているとは、到底言い難い状況です。
住民参加の機会がなくなれば、判断するための、正確な情報を知る機会もなくなります。
コロナ後の世界がどのようになっているのか、誰にもわかりません。
やはり、市民の皆さんが判断しうる正確な情報が開示できるとき、
また、弱い立場の人たちも含めてできるだけたくさんの市民の皆さんが、
住民参加のプロセスに安心して参加することができるとき、
そして、市民の皆さんが冷静な判断ができるときに、
住民投票を実施することこそ、究極の民主主義だと考えます。
民主主義を大切にしなければならない我々議会人は、
絶対に、いま、住民投票を行うべきではありません。
さて、市長は、よく「投票は、選挙と同じ究極の民主主義」とおっしゃいますが、
私は、今回の住民投票が選挙と並列(へいれつ)で述べられていることに
ずっと違和感があります。
選挙は、任期がありますから、実施時期をきめられません。
しかし、やり直すことができます。
今回の住民投票は、実施時期を決められます。
しかし、やり直すことができません。
また、市長は、記者会見の中で次のように述べておられます
「維新の会スタート時の公約で二重行政の解消で統合できていないのは水道ぐらいであり、
例え、知事市長が変わっても今度またバラバラにするのには10年20年かかる」と。
ご自身でほぼ都構想いう政策はバーチャルで実現していることを認めているわけです。
しかも、すぐには、バラバラにならないと認識されています。
ここがポイントですが、都構想の住民投票というのは、
都構想という政策の中の最後のピースであって、
制度的に実現するための仕上げの手段なわけです。
つまり政策的には8割9割ぐらいできていて、
あと1割2割の制度的担保の部分がのこっているということだと理解できます。
ということは、都構想という政策がいま必要なのであれば、
引き続きコロナ対策という政策と並行して進めることができるわけです。
つまり、都構想という政策が必要だとしても、
住民投票の実施は、不急なわけです。急ぎではありません。
最後の仕上げのピースとしては、必要ですが、急ぎではありません。
しかも大阪市の廃止が決まれば、やり直しがききません。
さらに廃止が決まればコロナ対策を行いながら、廃止のための仕事も始まります。
一方、選挙は、不要不急ではありません。
選挙は、任期があるのです。その実施は、止められません。
必要であり、急ぎです。
しかし、やり直しができるのです。
今回の住民投票と選挙の大きな違いは、
住民投票の実施時期が今なのか?ということを議会で決められるという点です。
そして、市民にやり直しがきかない選択を迫る点です。

こんな100年に一度のコロナ禍のパンデミックの中
正確な情報の開示と住民参加の担保という究極の民主主義の根幹を無視して、
そして、なにより、市民のくらしやいのちより、
住民投票を、緊急(急ぎ)のものにしてしまうことは、どうしても理解ができません。
しかも、都構想という政策は既に8割9割できていて、
住民投票を実施しなくても、継続して改革に取り組むことができるにも関わらずです。
住民投票が緊急(急ぎ)かどうかを決めるのは、最後は我々議会です。
つまり、今、住民投票の実施を決定するということは、
住民のくらしや命を守ることよりも、そして、民主主義の根幹を守ることよりも
住民投票は、急ぎであるという結論を出すことになります。
最終最後は、我々一人一人、そして、議会の良心が問われています。
私は、市民のくらしや命、そして民主主義の根幹を守ることが第一でありますので、
いま、この時期に住民投票を行うことには反対であります。
議員おひとりおひとりの最後の良心に期待いたしまして、
私からの反対討論とさせていただきます。
ご清聴ありがとうございました。

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